選手の前に立つ私が絶対にしてはいけないこと

リオオリンピックのシンクロ種目で
日本に復活のメダルをもたらした井村雅代さんですが、
試合に臨む前から厳しい試練に立たされていたといいます。

井村さんはその厳しい試練をどのように受け止め、
選手たちとどのように向き合ったのでしょうか。
『致知』1月号に掲載された講演録の一部を紹介します。

井村 雅代(シンクロナイズドスイミング日本代表ヘッドコーチ)
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※『致知』2018年1月号
※特集「仕事と人生」P10

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九回目のリオオリンピックでは、
試合に臨む前から厳しい試練に立たされました。
選手村の環境がこれまでで最悪だったのです。

トイレは詰まる、シャワーは途中から水になる、
パンは粉のようにパサパサ、レタスは茶色、バナナは真っ黒。
いまの豊かで清潔な日本で育った選手たちにはかなりのストレスだったと思います。

最も酷かったのが試合用のプールでした。
プールに藻が発生して水がどんどん緑色になっていったことは、
ニュースでご存じの方も多いと思います。

それだけならまだ対処できるのですが、水に潜った選手たちから
「先生、藻だけじゃないんです。
小さな泡だらけで水の中が全然見えないんです」と言われて、
バクテリアが発生していることが分かりました。
その水を飲んだら病気になりますから、これはさすがにダメですよね。



それが分かったのが前日の夕方でした。
近くにある別のプールの水を急遽ポンプで汲み出して移すことになりましたが、
試合当日の朝になっても、水深三メートルのプールに
まだ二メートルしか水が入っていない。

私は、これではとても間に合わないと思い、他国のコーチたちと一緒に
「試合前に一回でもいいから選手たちに練習をさせたいので、給水を急いでほしい」
と組織委員会に訴えに行き、何とか事なきを得たのでした。

とにかく最悪の条件の中で臨んだオリンピックでしたが、
そんな時、選手の前に立つ私が絶対にしてはいけないことは、愚痴を言うことです。
「こんなオリンピックってないよ」と言ったら、皆も愚痴を言い始めます。

まずは、これがリオオリンピックなんだと認めること。
そして私は選手たちに「この環境の中から金メダルは生まれるのよ」と言いました。
条件はどこも一緒なんだと。

そこに至るまでに徹底的に仕上げてきた国は、
何が起こってもやっぱり崩れないんです。
崩れない国の第一番はロシアでした。

二番目に崩れなかったのは、たぶん日本だったと私は思います。

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