突然知らされた借金10億円

多額の借金を抱えた老舗旅館を僅か2年で黒字化した
温泉旅館女将の宮﨑知子さん。
女将になるつもりはなかったという宮﨑さんが
なぜ女将になり、どのような改革をしていったのでしょうか。


宮﨑 知子(鶴巻温泉元湯陣屋旅館女将)
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※『致知』2018年2月号【最新号】
※特集「活機応変」P50
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──女将になられたいきさつを教えてください。

それが、女将になる一週間前まで全くやる気はありませんでした(笑)。
陣屋の跡取りだった主人と2006年に結婚したんですけど、
主人は継ぐ気はなく、主人の両親もそれを了承していたんです。
主人はホンダのエンジニアとして働いていました。
 
ところが2009年夏、2人目の出産予定日の10日前に環境が一変しました。
私が切迫流産のために入院していると、
義母から突然、
「借金が10億円あって、旅館の経営がかなりまずい状況にある」
と知らされたのです。


 
話を聞くと、義母が10億円もの借金をつくったわけではなくて、
バブル崩壊後、10年、20年と少しずつ積み上がっていった借金が、
リーマン・ショックによって手がつけられない状況になってしまったとのことでした。
 
前年に陣屋のオーナーだった義父が急死し、
義母も過労から入退院を繰り返すようになっていて、
実の息子である主人にどう切り出せばいいのかと、その時相談されたんです。

それで私が入院先から電話越しに主人に状況を伝えたところ、
開口一番、「ホンダの生涯賃金を超えてる」と言われました。
  
──普通に働いて返せる金額ではない……。

自分たちで返せないのであれば、すべてを手放すしかありません。
義母の今後の生活費だけでも賄えればと思い、
M&Aで売却した際にどれだけ財産が手元に残るのか、
いろんな所に見てもらいましたが、どこも使い物にならないと。

一社だけ運営権を買ってもいいというので、買い取り額の見積もりを出してもらったところ、
土地、建物、従業員、すべてを含めてたったの1万円でした。
しかも、「借入金の保証人からは抜けないこと」という条件付き。なので、
失敗したら借金だけが残るんです。
  
──厳しい条件ですね。

その会社はホテルチェーンでしたので、
主人にどんなホテルを運営しているかお客さんとして見てきてもらったんですけど、
どれもピンとこないと言うので、任せるべきじゃないと判断しました。
そうしたら、もう自分たちでやるしかないんです。
 
ですから、やりたいかやりたくないかとか、できるかできないかとか考える余地もない。
右にも左にも行けなくて、私たちが進めるのは一本道、しかも後戻りはできません。
娘が生まれて2か月後の10月に、10億円の借金だけを抱えて陣屋の女将に就任しました。

※宮﨑さんの旅館再建の道程は最新号で詳しく紹介されています。

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