佐藤可士和が明かした「ヒット商品を生み出す秘訣」——アイデアの源泉はどこにある?

ユニクロやセブン-イレブン、楽天、今治タオルなど、数多くの企業のブランディングやトータルプロデュースを手掛けてきた佐藤可士和さん。既存の広告やデザインの概念を超越し、社会や時代の本質を見抜くことで、数々のヒット商品を生み出してきました。「打率10割」を信念にいまも世の中に新たな価値を創造発信し続ける、日本を代表するクリエイティブディレクターの神髄に迫ります。

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目指すは打率10割、すべてホームラン

――他の誰もが考えつかないような斬新なアイデアをどうやって生み出しているのですか。

〈佐藤〉
1つは「イメージを持ち続ける」ことですね。全然知らない分野の仕事を依頼されることも多いので、「アイデアが尽きることはありませんか」と、よく質問を受けるんですが、アイデアは自分が無理矢理ひねり出すものではなく、答えは常に相手の中にあると思っています。

たとえ初めて経験することであっても、対象と真剣に対峙すれば必ず答えは見つかると信じているのです。

それと僕はいつも、打率10割、すべてホームランにしようと思ってやっています。

何人ものクライアントを抱えていると、つい目の前のクライアントを大勢いる中の一人と捉えがちですが、それは違います。クライアントにとっては1回、1回が真剣勝負で、社運を賭けて臨んでいるわけですから、失敗なんて許されないですよ。

――ヒット商品を生む秘訣のようなものはありますか。

〈佐藤〉
商品の本質を見抜くことが肝要です。本質を見抜くとはある表層だけではなく、いろいろな角度から物事を観察し、立体的に理解するということです。

そのためのアプローチは様々ありますが、中でも僕が最も重要だと思うのは、「前提を疑う」ということです。

――前提を疑う、ですか。

〈佐藤〉
これは僕のクリエイティブワークの原点ともいえるフランスの美術家、マルセル・デュシャンから学んだことです。

20世紀初頭、皆が一所懸命絵を描いて、次は何派だとか言って競っている時に、デュシャンはその辺に売っている男性用の小便器にサインをして、それに「泉」というタイトルをつけて、美術展に出したんです。

キャンバスの中にどんな絵を描くのかということが問われていた時代に、いや、そもそも絵を描く必要があるのかと。見る人にインパクトを与えるために、敢えて便器という鑑賞するものとは程遠いものを提示して、アートの本質とは何かをズバッと示した。つまり、そういう行為自体が作品であると。

――まさに前提を覆したのですね。

〈佐藤〉
そうです。ただ、必ずしも前提を否定することが目的ではありません。

一度疑ってみたけど、やはり正しかったということも十分あり得るでしょう。大事なのは、「そもそも、これでいいのか?」と、その前提が正しいかどうかを一度検証してみることです。

過去の慣習や常識にばかり囚われていては、絶対にそれ以上のアイデアは出てきませんから。

好きか嫌いかではなく、必要かどうか

――前提を疑わなければ、よいアイデアは生まれないと。

〈佐藤〉
はい。あと1つ挙げるとすれば、「人の話を聞く」ことが本質を見抜く要諦だといえます。

相手の言わんとする本意をきちんと聞き出す。僕はそれを問診と言っていますが、プロジェクトを推進していく際はこの問診に多くの時間を割いています。じっくり悩みを聞きながら、相手の抱えている問題を洗い出し、取り組むべき課題を見つけていくのです。

――問診するにあたって、何か心掛けていることはありますか。

〈佐藤〉
自分が常にニュートラルでいること、それが重要です。邪念が入るとダメですね。人間なので好き、嫌いとか気性の合う、合わないは当然あるじゃないですか。ただ、合わない人の言っていることでも正しければ、その意見に従うべきですし、仲のいい人でも間違っていれば「違いますよね」と言うべきでしょう。

感情のままに行動するのではなく、必要かどうかを判断の拠り所とする。いつも本質だけを見ていようと思っていれば、判断を間違えることはありません。

――本質だけを見ていくことが要になるのですね。

〈佐藤〉
本質を摑んで何か見える形にする、あるいは感じられる形にして、社会に提示することが僕の仕事ですからね。

デザインとは一つのソリューション、解決の方法だと思うんです。デザインというと、一般的には表層的な形や美しさをつくることだと思われがちですが、クライアントの言葉にならない熱い思いやビジョンを引き出し、最適な形に具現化して、世の中に伝えていくことだと考えています。デザインの力を使って、多くの人の日常が少しでもよりよい方向に変わっていく一端を担いたい。それを実現するためにも社会や時代の本質を見抜き、世の中に新しい価値を提示し続けていきたいと思っています。


(本記事は『致知』2012年9月号に掲載された佐藤可士和さんのインタビュー「デザインの力で新時代を切り開く」より一部抜粋したものです)


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◇佐藤可士和(さとう・かしわ)
1965年東京都生まれ。1989年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。博報堂を経て、2000年「サムライ」設立。国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、セブン‐イレブン、楽天グループ、今治タオルのクリエイティブディレクション、幼稚園や病院のプロデュースなど、企業や組織の本質を掴み、その存在を際立たせるコミュニケーション戦略とデザイン力で注目を集める。東京ADCグランプリ、毎日デザイン賞ほか多数受賞。慶應義塾大学特別招聘教授、多摩美術大学客員教授。2016年度文化庁文化交流使。著書に『佐藤可士和の超整理術』『佐藤可士和のクリエイティブシンキング』(ともに日本経済新聞出版社)などがある。

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