一流経営者に共通するもの――本田宗一郎、松下幸之助、井深大、盛田昭夫

感動する話

明治、大正、昭和と近代日本の構築に貢献した創業者に、資料や取材を通し、さらには直接に交わってきた作家の故・城山三郎さん。そんな城山さんに経営者のあり方や人生や仕事を発展させる秘訣を語っていただいた貴重なインタビュー。

魅力ある経営者たちに共通したもの

(城山) 

創業者で一人だけ挙げろと言われたら、私は本田宗一郎さんを推したいと思っているほどです。あの人はまさに社業にすべてを賭け、会社を大きくすることに集中し、「魔」を実践した人です。

本田さんが社名をホンダとしたのを後々まで悔いていたというのは有名な話ですが、人間はそこまで徹すると自分がはっきりと見え、謙虚になれるんでしょうね。自分は技術の社長で、本当の社長は専務の藤沢武夫さんだとは本田さんがよく言っていたことですが、それも口先だけで言うのではありません。心底から本当にそう思っていたんです。

人間、謙虚だと自分に足りないものがよく見えるから、それを持っている人とパートナーを組むことができるんですね。それが成功につながる。

ソニーの井深大さんと盛田昭夫さんもそうです。井深さんが技術畑で盛田さんが営業畑。初代、二代とも謙虚さを備えていた。そういえば、成功した創業者というのは社員を大事にしますね。自分に足りないものが見えるから、社員を育てようとするのでしょう。

井深さんはカメラが趣味で、何を撮るかと言えば、その頃の井深さんは会社の近くのマンションに住んでいて、よく社員がやってくる。その社員の素顔をもっぱら撮るんです。

単なる趣味ではないでしょう。この社員はこういうことを言っていた。この社員はこんなことを考えている。そういうことを頭に刻み付けて、では、どういう仕事を与えれば伸びるか、どの仕事を任せることができるか、それをいつも考えていたんですね。

 

松下幸之助に学ぶ、企業成長の要

松下幸之助さんもそうです。「自分が病身だったから、会社を大きくすることができた」とは、幸之助さんがよく言っておられたことです。

病身だから思うように動けない。社員に任せるしかない。だからこの社員と見極めて仕事を任せたら、すべてを任せてしまう。そして結果は自分が取る。その潔さこそが松下電器の原動力となったのでしょう。

 創業者というのは自信があるから、どうしても「俺が俺が」になりがちです。よく会社が不祥事を起こして、「社員にある程度任せていたが、自分がきちんと見ることができなくてこういうことになってしまった」などと弁明している経営者がいるでしょう。

 みっともない話です。社員に仕事を任せるにしても、中途半端な任せ方しかしない。経営者がちょこちょこ口出しする。従って、社員もいいかげんになってしまう。中途半端な任せ方だから、結果についてはすべて経営者が責任を負うという潔さも出てこない。

逆に言えば、社員にすべてを任せるような育て方をしていない、 きちんとした社員教育をしていない、ということでしょう。すべてをここに賭けるという潔さがないから、そういうことになるんです。

(本記事は『致知』2005年2月号を一部、抜粋したものです。

城山三郎(作家)

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名古屋生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎えた。一橋大学卒業後、愛知学芸大学に奉職、景気論等を担当。1957年、『輸出』により文学界新人賞、1959年『総会屋錦城』で直木賞を受け、経済小説の開拓者となる。吉川英治文学賞、毎日出版文化賞受賞の『落日燃ゆ』の他、『男子の本懐』『黄金の日日』『役員室午後三時』『毎日が日曜日』『官僚たちの夏』『もう、きみには頼まない』『硫黄島に死す』『指揮官たちの特攻―幸福は花びらのごとく―』等、多彩な作品群は幅広い読者を持つ。1996年、菊池寛賞を、2002年、朝日賞を受賞。2007年逝去。

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