明治22年に生まれた著者の祖母は、厳格な武家の娘としての躾を受けました。著者は明治大正昭和の時代をたくましく生きた祖母と12歳までともに暮らしましたが、後年、祖母の生き方、その言葉を思い出すにつけ、戦後日本人の女性が忘れてしまった「人としての心得」「女性としてのあり方」が散りばめられていることを知ります。
それこそが武家の女性の矜持そのもの、つまり "女子の武士道" だったと気づいたのでした。本書は55の祖母の言葉を挙げながら、女性とは、妻とは、夫婦とはどうあるべきかを語っていきます。
「女子の」とタイトルにありますが、凛とした女性がいてこそ立派な男、家庭、そして社会があることを納得していただけることでしょう。
さらに言えば、女性から見て男子はこうあるべきだと暗に諭される、男子にもまた必読の一冊です。
「夫を穢すことはおのれを穢すことですよ」
「子供には目に見えぬものを与えなされ」
「ときには夫に妻たる者の覚悟を見せてやりなされ」
「父の存在を絶えず感じさせる母でおらねばならぬ」
「人の上に立つ以上は寛大に、そして自ら隙をつくりなされ」
どれほど困難な時代、どんな境遇であろうとも、運命を受け入れて強く生き抜く覚悟があれば、自ら幸せを掴むことは可能である。この真理を教えてくれたのは、元米沢藩士の娘として明治半ばに生まれ、厳格な武家の躾を受けた祖母でした。かつては庶民にまで浸透していた武士道を基とする日本の精神は、残念ながら失われつつあります。いま、多くの人が強く生きるための芯を持てずにいるのは、日本人としての規範を失ったためでしょう。
21世紀、歴史は新たな局面を迎えました。今こそ先人に学び「屈強な日本人」を取り戻さなければなりません。本書は、かつての日本人の一典型として祖母の生き方を綴りながら、新渡戸稲造の『武士道』と日本人の倫理観に影響を及ぼした『論語』を引用しました。先人の矜持を皆さまと共に学び、人生に生かしていくことができれば、たいへん嬉しく思います。