北方謙三/福島智・著
定価=本体 1,200円+税
累計約一千万部の大ベストセラー「大水滸伝」を生み出した作家と、十八歳で全盲ろうになった東大教授。互いに深く尊敬し合う二人が、自らのルーツや人生観について語り合った魂の対話録、ここに誕生!!
——BARにて——
青春というのは意味のあることを成し遂げることじゃないんです。どれだけ馬鹿になれたか。どれだけ純粋で一途になれたか。
適当に誤魔化すんじゃなくて、しんどいことはしんどいこととしてしっかり受け止める。しんどいことと共に生きる。そういう姿勢を貫くことで、おそらくそのしんどさが自分の強さや、豊かさを養ってくれるのではないかと思いますね。
私たち生きている人間は、せめて自分の生き方をきちんと獲得しなければならない。でなければ運命なんかひらけないでしょう。
私にとってはもう、生きていることそのものが未来をひらいていることと言えます。毎日毎日、一瞬一瞬、未来を切りひらきながら生きている。
親父が、私がみんなからやめろ、やめろとめった打ちにされている頃、ひと言だけ言ってくれたことがあるんです。「男は十年だ」と。
これまでの歩みを、私は戦いのようだったと思っているんですが、そういう私に亡くなった親父からもらった暗黙のメッセージがありましてね。それが筋を通すことなんです。
せめて私が福島先生に自慢できるのは、生きることは書くこと。そう思い定めて仕事をしていることでしょうね。
様々な場面で様々なやりとりをして、具体的にどう動くかということ。行動と結びついた言葉が、私にとってはすべてなんです。
惚れた相手というのは鏡に映った自分だと思うようにしています。自分に見合った相手に惚れるものなんです。
人生いろいろあるだろうけれども、とにかく生きてさえいれば、それだけで人生というテストで八十点、九十点を取っているようなものではないでしょうか。だからとにかく生きることが大事。