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運命を切りひらくもの

運命を切りひらくもの 北方謙三/福島智・著

北方謙三/福島智・著 
定価=本体 1,200円+税

累計約一千万部の大ベストセラー「大水滸伝」を生み出した作家と、十八歳で全盲ろうになった東大教授。互いに深く尊敬し合う二人が、自らのルーツや人生観について語り合った魂の対話録、ここに誕生!!

目次

まえがき——北方謙三

第一章 運命を切りひらくもの

  • 最もしんどい時期に北方作品に生かされた
  • 点字から美しいメロディが聞こえてくる
  • いつも、たった一人に向かって書いている
  • 「俺はこんな男になりたい」という願望が小説になる
  • どん底で力になるのは命ギリギリで生きる登場人物
  • 青春とは、どれだけ馬鹿に、一途になれるかである
  • めった打ちにされる俺に親父が言った「男は十年だ」
  • 僕は豚やない。生きがいが欲しいんや!
  • 生きることは書くこと、書くことは生きること
  • 人は自らの生き方を獲得しなければならない

第二章 逆境が自分を育てる

  • 十六年がかりで書き上げた「大水滸伝」シリーズ
  • 最初の一行が出てくるまで苦しみ続ける
  • イメージはどこから生まれてくるのか
  • 「あいつは死んでいない。俺たちが忘れないからだ」
  • 自分を表現したかった。「俺はここにいるぞ」と言いたかった
  • 盲ろうの二重障害で日本初の大学受験に挑戦
  • 障害者の学級で痛感した人間の真実
  • 一途に成り切れないいまの若者たち
  • 人生にマニュアルを求めるな

——BARにて——

  • 私という存在を鋭く、美しく表現してくれた言葉
  • 酒を飲むことは一日も休んだことがない
  • だらしない自分を真剣で斬り捨てる

第三章 生きて、生きて、生き切れ!

  • いまも大切にしている父からの手紙
  • 幼少期の愛読書『スイスのロビンソン』
  • 極寒、落下、リンチ……極限体験が創作の土台に
  • 『次郎物語』『宮本武蔵』『星の王子さま』の眩しい思い出
  • 自分の大切なものを守り抜く登場人物に深く感情移入
  • 読者からの訴えで変更した登場人物の最期
  • 登場人物は作家の意図を超えて動き始める
  • 惚れた相手は鏡に映った自分である
  • いろんな国の女性たちと仲良くなる秘訣
  • 人生には、物語があってよかったと思う瞬間がある
  • 言葉がなければ人間の魂は死んでしまう
  • いまこうして生きていることが一番大事

あとがき——福島智

魂に響く言葉の数々!

青春というのは意味のあることを成し遂げることじゃないんです。どれだけ馬鹿になれたか。どれだけ純粋で一途になれたか。

適当に誤魔化すんじゃなくて、しんどいことはしんどいこととしてしっかり受け止める。しんどいことと共に生きる。そういう姿勢を貫くことで、おそらくそのしんどさが自分の強さや、豊かさを養ってくれるのではないかと思いますね。

私たち生きている人間は、せめて自分の生き方をきちんと獲得しなければならない。でなければ運命なんかひらけないでしょう。

私にとってはもう、生きていることそのものが未来をひらいていることと言えます。毎日毎日、一瞬一瞬、未来を切りひらきながら生きている。

親父が、私がみんなからやめろ、やめろとめった打ちにされている頃、ひと言だけ言ってくれたことがあるんです。「男は十年だ」と。

これまでの歩みを、私は戦いのようだったと思っているんですが、そういう私に亡くなった親父からもらった暗黙のメッセージがありましてね。それが筋を通すことなんです。

せめて私が福島先生に自慢できるのは、生きることは書くこと。そう思い定めて仕事をしていることでしょうね。

様々な場面で様々なやりとりをして、具体的にどう動くかということ。行動と結びついた言葉が、私にとってはすべてなんです。

惚れた相手というのは鏡に映った自分だと思うようにしています。自分に見合った相手に惚れるものなんです。

人生いろいろあるだろうけれども、とにかく生きてさえいれば、それだけで人生というテストで八十点、九十点を取っているようなものではないでしょうか。だからとにかく生きることが大事。