追悼 渡部昇一先生追悼 渡部昇一先生
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櫻井よしこ氏

朗らかな、日本への愛と
信頼にあふれた笑い声

櫻井よしこ氏(ジャーナリスト

渡部昇一先生、あなたはいつも朗らかでした。
日本が濡れ衣を着せられている歴史問題を語るときでさえ、濡れ衣を着せる国家や民族の過ちを指摘して、真実の力は強いと、朗らかに笑うのが常でした。

致知出版社が主催するホテルニューオータニでの会合にお招きを受ける度、私は日本を取り囲む国際情勢について語り、日本人がなすべきことを説き続けました。話に耳を傾け、大事な点に解説を加えて、深めて下さるのが渡部さんでした。

文字どおり古今東西の書物に通じ、膨大な量を読んでおられることには圧倒され続けました。単なる博覧強記ではなく、知識のひとつひとつが、祖国日本への愛、信頼、誇りと一体化しているのを感じさせられました。

どれ程多くの若い世代の人々が、『全文リットン報告書』の渡部さんの解説から大事なことを学んだことでしょう。『紫禁城の黄昏』の解説では、岩波文庫の訳文から、中華人民共和国に都合の悪い部分が削除されている事実を指摘なさいました。東京裁判で証拠採用されなかった同書を、どの章も削除することなく完訳の形で世に出されたこと、その意味を説かれたことは、日本人の歴史観を極めて前向きに変える力となったはずです。

歴史に埋もれていた数多の事実に光を当て、日本の名誉回復と、若い世代の自信回復の後押しをなさった渡部さんに、心よりの敬意をはらいます。そしてもう、あの朗らかな、そして日本への愛と信頼にあふれた笑い声をきけなくなったことを、心底、寂しく思います。

渡部先生、万感の想いを込めて、申し上げます。本当にありがとうございました。


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