"国民教育の師父" と謳われた森信三先生による不朽の名著。
森先生が70代で執筆された著作で、生徒を対象に講話(授業)を進めていく形式で、年代別に各30篇、全150講話が収録されている。
『修身教授録』と並ぶ代表的著作といわれ、青少年への講話集でありながら、
その内容は年代を問わず「人間、いかに生きるべきか」の指針となるものばかり。
本書刊行に至るまでには、幾多の困難があった。
昭和44年夏、先生は下稿の前半部を一気呵成に書き上げるも、その後、ご夫人の病死、ご長男の事業の蹉跌・急逝……など
苦難や試練に次々と見舞われ、幾度も中断を余儀なくされる。
完結までに足かけ五年の歳月を費やした本書は、森先生自らが「宿命の書」と名付けたほど、特別な思いを寄せられる作品である。
その晩年に渾身の力を込めて青少年に訴えようとされた人生の根本問題とは何か——。
そのメッセージは時代を越え、あらゆる人々の胸に響き渡る。
今や回顧してみるに、この「幻の講話」は、その最初の執筆から考えると、まさに足かけ五年の歳月をへて、ようやくその第一巻が陽の目を見るに到ったわけであって、このようなことは、永いわたくしの著述歴の上にも、未だかつて無かった事である。
(略)
これら二種の叢書(『修身教授録』と『幻の講話』)は、いずれも「われら如何に生きるるべきか」という人生の根本問題を中心としながら、共に脚下の現実的実践という視点に立つ「啓発の書」という点では、深き共通性があるといえるであろう。
——森信三(『幻の講話』あとがきより)
「人生二度なし」ということは、
わたくしにとっては、どんなことよりも
大事な人生の根本信条であって、
この前にも申したように、
わたくしは32、3才のころから今日まで、
一日としてわたくしの心の底から
離れたことはないのです。
(第4講——まず人間としての軌道に)
たのもしい男という場合、
どういう男性かというと、
それはおそらく「責任感」の強い男性
では
ないでしょうか。
すなわち、一たん自分が引き受けた以上、
どこまでもその責任を果そうとするような
男性こそ、真にたのもしい男性と
いうのではないでしょうか。
(第12講——男らしさ)
われわれ人間のネウチというものは、
その人が大切な事がらにたいして、
どれほど決心し努力することが
できるかどうかによって、
決まるといえるのであります。
(第8講——物事をつづける工夫)
人間の知恵のあるなしは、
その人がどこまで先の見通しが
つくか否かによって分かる
(第20講——見通しが知恵)
人間の幸・不幸というものは、
それぞれ人によって大たいは
決まっているものであり、
したがってわかい時に不幸な人は、
もしその人がやけにならずに
一生努力すれば、
晩年は幸福になるものだ
(第24講——人間の一生)
森 信三
明治29年9月23日、愛知県生まれ。大正15年京都大学哲学科卒業。
昭和13年旧満州の建国大学教授、28年神戸大学教授。
「国民教育の師父」と謳われ、86歳まで全国を講演、行脚した。平成4年逝去。
著書に『修身教授録』『人生二度なし』『森信三一日一語』『森信三訓言集』『10代のための人間学』『父親のための人間学』『家庭教育の心得21』(いずれも致知出版社)など多数。
中でも『修身教授録』は教育界のみならず、SBIホールディングス社長の北尾吉孝氏、小宮コンサルタンツ社長の小宮一慶氏など、愛読書として挙げる経営者やビジネスマンも多く、いまなお人々に感化を与え続けている。