人間・鈴木大拙を語る 西村惠信(花園大学元学長) 岡村美穂子(大谷大学元講師)

鈴木大拙が亡くなって半世紀以上が経過したいま、その謦咳に接した人たちも数少なくなった。雑誌『禅文化』の編集などを通して大拙と接してきた西村惠信氏と、亡くなるまでの15年間、傍にいてその活動を支え続けてきた岡村美穂子さんはその貴重な証言者である。様々な逸話を交えてのお2人の対話から、人間味溢れる鈴木大拙の一面が明らかになる。

「禅はこうだ」「キリスト教はこうだ」と違いを見せ合ってきたものを一歩超えて「宗教が求めているものは何か」というところまで深めていく。それがグローバル時代の宗教のあり方だと思っています

西村惠信
花園大学元学長

 いまはインターナショナルの時代、と言うよりもむしろグローバルな時代です。大拙先生が活躍されていた時代とはあらゆる面で大きく変わりました。「禅はこうだ」「キリスト教はこうだ」と違いを見せ合ってきたものを一歩超えて「宗教が求めているものは何か」というところまで深めていく。それがグローバル時代の宗教のあり方だと思っています。
 大拙先生が時代に即応されたように、私たちも新しい時代に私たちのやり方で即応していかなくてはいけない。それこそが大拙先生の遺志を継承しようとする者の役目だと私は思っているんです。

今度は大拙先生がおっしゃいました。「あなたの手を見せてごらん」と。私は手のひらを上にして出しました。そうしたら「綺麗な手じゃないか」と手を摩ってくださって「よく見てごらん。仏の手だぞ」

岡村美穂子
大谷大学元講師

 大拙先生はご自分の手を宙で舞わせて「美穂子さん、これあんたが動かしているのか」と聞かれるんです。「私が先生の手を動かすわけありません。自分の手も自分でいちいち意識して動かしているわけじゃありません」「じゃあ、あんたのお母さんが動かしているのか」「そんなことありません」「あんたのお母さんのお母さんが動かしているのか」……。
 誰も意識して動かしていないけれども、手は自然に動いている。これはどうしてなのか、という問題の持ち方をこの時先生は教えてくださいました。しかも、その問題は相対的な分別智の次元を超えた世界のことですから、頭で考えたとしても分かることではないんですね。

プロフィール

西村惠信

にしむら・えしん─昭和8年滋賀県生まれ。花園大学仏教学部卒業後、南禅寺僧堂柴山全慶老師に参禅。35年米国ペンデルヒル宗教研究所に留学し、キリスト教を研究。45年京都大学大学院博士課程修了。文学博士。花園大学教授・学長、禅文化研究所長などを歴任。平成30年仏教伝道文化賞受賞。『鈴木大拙の原風景』(大法輪閣)『禅語に学ぶ生き方・死に方』(公財・禅文化研究所)『キリスト者と歩いた禅の道』(法蔵館)など著書多数。

岡村美穂子

おかむら・みほこ─昭和10年アメリカ・ロサンゼルス生まれ。ハンター・カレッジ、コロンビア大学に学ぶ。『ザ・イースタン・ブディスト』編集員、大谷大学講師などを歴任。15歳の時にニューヨークで鈴木大拙と出会い、亡くなるまでその活動を支える。著書に『大拙の風景 鈴木大拙とは誰か』『思い出の小箱から 鈴木大拙のこと』(共に燈影撰書)など。


編集後記

鈴木大拙の謦咳に接した人が次第に少なくなる中、花園大学元学長の西村惠信さんと大谷大学元講師の岡村美穂子さんの対談内容は貴重な証言といえるでしょう。直接会った人にして語り得る数々のエピソードを通して、人間味に溢れた大拙の人柄や思いが伝わってきます。当時十五歳だった岡村さんに、さらりと禅の奥義を語って聞かせる話など興味は尽きません。

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