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北尾吉孝氏 「私の人生観」(経営哲学塾)

北尾吉孝 SBIホールディングスCEO
「私の人生観」(2006年6月 当社主催「経営哲学塾」)
北尾吉孝

私の原点
私の考え方の原点は何かと振り返りますと、父親の影響が非常に強いです。
幼稚園に行くか行かないかの頃から、中国古典の節句を私たち兄弟に言って聴かせてくれました。その頃は意味もあまりわかりませんでしたが、次第に私の中に馴染み染み込んでいったのではないかと思います。
「積善の家には必ず余慶あり、積不善の家には必ず余殃あり」(易経)
善行を施す家には必ず余分の恵みがあり、不善を施す家には必ず余分の禍がある。
「天網恢恢祖にして漏らさず」(老子)
天の網の目というのは広いように見えて決して悪を逃すことはない。
父は耳にタコができるくらい、こういうことをいつも私に言ってくれました。

私の人生観
古典に親近感を持ち、さまざまな本を読むうちに染み付いてきた人生観が五つあります。
「天の存在」「任天任運」「自得」「天命」「倫理的価値観」です。
「天の存在」とはこの世を超えた世界があるということ。人が見ていないからといって何をしても良いのではない。必ず神は見ているのだということです。だから必ず一人を慎む。
自己を律するという意識を持たないといけない。

「任天任運」とは生きるか死ぬか、これまさに天命だと。金持ちになるか尊くなるか、これもまた天の配剤なのだと。最近は私に起きた一切合財はすべて天命なのだと思うようになっています。仕事が上手くいかない時は、まだ修養が足りないから天がいろんな苦難をわざわざ与えてくれているのだというように考えます。上手くいかなくてもクヨクヨ悩まない、上手く行かないほうが良かったのだと、天がそのようにしてくれたのだと頭をサッと切り替えるようにしています。

「自得」とは、人間はまず自己を得なければいけない。人間はいろいろなものを失うが、何をいちばん失い易いかというと「自己」である。人間はまず自ら自己を点検し把握する。これがあらゆる哲学、道徳の根本である。自己がよくわからないのに、人生いかに生くべきかなんて考えられないなと私はある時から思ったのです。


「天命」とは天から与えられた自らの使命を知ることです。これが知れたら、天を憂えず、天命を悟ってこれに安んじ、そしてこれを楽しむような境地に私もなりたいなということですがこれがなかなか難しい。ただ天命だと思うようになって、あまり心配する、悩むということが減ったように思います。僕の天命は何なのだとずっと模索し続けてきて49歳の時に、そうだ自分の天命はこの二つなのだと思った。そのひとつがインターネットを用いて顧客中心のサービスを安く提供し社会に貢献すること。もうひとつは、事業活動によって得られた自らの資産を使い、恵まれない子供たちへの社会貢献活動を行なうということです。
「倫理的価値観」は、事業を始める上でも何をするにしても、世の中は毎日が判断の連続です。その時にぶれない判断とはどういうものかと考えてみると、倫理的価値観こそがぶれない判断の基になるのではないかと思います。私は「信・義・仁」の三つの言葉を基準に置こうと考えました。
そして、生に対する愛惜の念。私は人生観を語る時に死生観なくして人生観は語れないと
思っています。死を意識するからこそ生を意識する。天命を全うするためには健康で長生きしなければならない、「惜命」という意識が重要なのではないかと思います。


リーダーの心得
ひとりで出来ることはたかが知れています。修養して少しでも徳を積み、そして徳が高かければ、「徳は孤ならず、必ず隣あり」という論語の言葉のようにいろいろな人が集まってきて助けてくれる。カーネギーは全財産を寄付してその生涯を終えましたが、彼の墓碑に「自分より有能なる人を多く集めし者ここに眠る」と書かれています。
私にできることは日々研鑽して自らを高めていく努力を怠らないということ。そうすれば有能な人が集まって事業も上手くいくのだと考えています。
講義終了後の質疑応答


【質問】
「具体的にどういう場面で古典の学びを生かしてこられましたか?」
【答え】
「中国古典に代表されるように長い歴史のふるいにかけられたものは、それなりに活学と
 して意味があるから現代も読まれるのだろうと思います。こういうものをしっかりと身に付けていくことが自分自身の判断力を増していくものにつながっていきます。
 歴史のふるいにかけられた書物をたくさん読むことによって心の栄養にしながら人間として成長すれば、その判断が仕事の上でも事業の上でも、あらゆることに生きていくであろうと思います。

質疑応答
【質問】
「英語を学ぶよりも、子供の頃から漢文の原文などを読ませるほうが大事だと考えます  がいかがでしょうか?」
【答え】
「自らの国の言語でしっかりとした考え方を身に付けることがいちばん大事だと考えます。
言葉はツールですから、まず国語をきちんと勉強する、歴史を勉強することが大事です。
古典は自分自身が読んでそこから何を感じるか、何に共感できるかが大事だと思います。
戦後の日本人の教育の根幹の中に、もう一度、東洋思想というものを入れていかなければ
ならないと思います。


【質問】
「中国古典は難しいと思われていますが、東洋思想の良さを伝えていくには、どうしたら
良いでしょうか?」
会場風景
【答え】
「人に人徳があるように、会社にも社徳があるということを、いつも社員に言っています。
 社徳を高めるためには社会に貢献しなければならない。そしていちばん重要なのは本業
 を通しての社会貢献です。まず自分自身の徳を高め、そして周りの徳を高めるために尽 
 力する。おおいに周りの人を感化していくことが大事だと思います。」


北尾吉孝 SBIホールディングスCEO プロフィール





北尾吉孝
【プロフィール】
北尾吉孝(きたお・よしたか) 

1951年、兵庫県生まれ。74年、慶応義塾大学経済学部卒業。 同年、野村證券入社。78年、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。 89年、ワッサースタイン・ペレラ・インターナショナル社(ロンドン)常務取締役。 91年、野村企業情報取締役。92年、野村證券事業法人三部長。 95年、孫正義氏の招聘によりソフトバンク入社、常務取締役に就任。 現在、ベンチャーキャピタルのSBIインベストメント、オンライン総合証券の SBIイー・トレード証券、住宅ローンのSBIモーゲージ等の革新的な事業会社 を傘下に有し、金融、不動産、生活関連サービスなどの事業を幅広く展開する 総合企業グループ、SBIホールディングス代表取締役CEO。

著書に『中国古典からもらった「不思議な力」』、『進化し続ける経営』 『Eファイナンスの挑戦Ⅰ』『Eファイナンスの挑戦Ⅱ』『人物をつくる』 『不変の経営・成長の経営』などがある。




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