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占部賢志氏 福岡県立太宰府高等学校教諭

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「語り継ぎたい美しい日本人の物語」の挿絵を描かれている
竹中俊裕氏のご紹介および過去のイラスト一覧は、

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プロフィール
占部賢志(うらべ・けんし)

昭和25年福岡県生まれ。九州大学大学院博士課程修了。福岡県の高校教諭として奉職、担当は日本史。福岡県立学校生徒指導主事研究協議会事務局長、福岡県いじめ問題対策協議会委員など歴任。現在は現役教師が学ぶNPO法人「師範塾」塾長も務める。著書に『歴史「いのち」』『続・歴史の「いのち」』(ともにモラロジ―研究所)などがある。

占部賢志氏のご紹介

数学者として名高い岡潔先生の講演を聞く機会に恵まれたのは、
占部先生が大学1年生の時でした。
講演のなかに、

「人間にとって最も大切な感情は懐旧の情である」

という岡潔先生の言葉があったといいます。
父親の仕事で幼い頃から何度も転校を余儀なくされ、
懐旧の情を育てるはずの故郷を持たない占部青年は、
その言葉に対して私はどうすればいいのかと質問をぶつけました。


「そんなことはない、君には日本の歴史があるじゃないか。
日本の古典を読みなさい。
懐かしさというものがどういうものかきっと分かります」


岡潔先生
(岡潔先生)

これが岡先生の答えでした。
胸に沁みこむような感動につつみこまれたと、
占部先生はその時のことを振り返ります。
そしてこの言葉との出会いが、
占部先生を一生涯かけて学ぶべきものへと引き合わせてくれたのでした。

そしてもう1人、占部先生の志を確かなものへと導いてくれた碩学との出会いがありました。
それは、宮崎県延岡市で開催の講演会に見えられた文芸評論家の小林秀雄先生でした。

小林秀雄先生
(講義中の小林秀雄先生)


講演終了後、興奮した面持ちの占部青年は、なんとしても先生にうかがいたいことがある、
ただその一心で小林先生の投宿先を講演の担当者から聞き出し、
いそいで先回りをして先生を待ち構えていたといいます。
突然表れた青年に対して、小林先生はたじろぐことなく、
姿勢を正されて質問に応じてくれました。

「先生は歴史を知るとは自己を知ることだとおっしゃっていますね。
この意味がどうしても分からないのです。
どうして自己を知ることになるのでしょうか」

占部青年の質問に対して

「歴史についてねぇ、それは大変難しいことです・・」

と先生はつぶやきました。


小林先生と
(小林先生との霧島散策)

そして、おもむろに先生は語り始めました。
ときに興奮した面持ちで、占部青年の肩を幾度もたたかれたといいます。


「いいかい、君の身体には、先祖の血が流れているんだよ。
それが歴史というものなんだ。そこをよくよくかんがえなくちゃいけない。
誰でも宿命を持ってこの世に生まれてくるんです。
そのことをきちんと自覚しなければだめだ。
そして、生きてきた責任を果たさなければならないんだよ」


小林先生との「個人授業」は30分にも及んだのでした。


集合写真
(高千穂川原にて。前列中央に小林先生、同じく前列左端に当時の占部先生)

人間というのは直接自分を知ることはできず、
歴史に学んでみて初めて自分がわかる。
つまり歴史を学ぶ究極の目的は自分を知ることであり、
それは「未見の我」に出会うためにある。
この思いが、占部先生の生涯を貫くテーマになっているのです。


小林先生の墓前
(小林先生の墓参にて 平成15年3月、鎌倉東慶寺)

小林秀雄先生への質問の様子

次の一文は、昭和48年11月8日、
宮崎県延岡市で開催された文藝春秋社主催の文化講演会に
講師として見えられた小林秀雄先生の講演を聴講した
当時大学3年生の占部青年が講演終了後に友人を誘って
小林先生が宿泊される旅館を訪ねて質問した際の様子を、
その場に臨席していた当時文藝春秋社の郡司勝義氏(のち作家)が書かれたもの。

「(昭和48年)11月初めの延岡市での講演を聴きこられた方で、
昂奮が醒めやらず、ホテルのロビーで、
12時頃まで待っていたふたりの青年がいました。
実は、その熱意に大変うごかされて、
このテーマ(小林秀雄最晩年の名エッセイ「信ずることと知ること」)
を選ぶに至ったのですが、
…小林先生が、まったく見ず知らずの青年に懇々とさとされている姿は、
目蓋に焼きついていて離れません。

…そのふたりの方は、もう四十歳をこえていられる筈です。
おそらく生涯忘れることの出来ない記憶をお持ちだろうと思います。
一度、お会いして、その時のことをうかがいたいと思っております」

        郡司勝義「小林秀雄『信ずることと知ること』を繞って」
                (月刊誌『国民同胞』平成4年8月号)


『本居宣長』
(小林先生畢生の著書『本居宣長』)

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