2008年2月号:特集「将の条件」
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特集 将の条件
「一国は一人を以て興り一人を以て亡ぶ」
宋のすぐれた学者、蘇老泉の言葉である。一つの国はどういう将がいるかによって発展も
するし滅びもする、というのである。大は国家から小は家庭まで、例外はない。
「其の人の存すれば則ちその政(まつりごと)挙がり、其の人の亡すれば則ちその政息(や)む」
『中庸』も同じことを説く。将の役割は重大である。
将と言えばこの人を想起する。住友生命の故・新井正明氏(元社長・会長)である。ノモ
ンハン事件で右脚を失った身ながら、自転車の荷台に乗せてもらって陣頭指揮に東奔西走、
社員の心を一つに結び、業界第十一位だった同社を第三位に躍進させた人である。どこにい
ても自然に人に推され、その組織体の長についた人であった。
その新井氏が常に坐右に置いたのが『論語』だった。中でも全身を貫く教えとし実践に励
んだのが、次の一語である。
「その身正しければ令せずとも行わる。その身正しからざれば令すといえども従わず」
氏は言ったものである。
「自分が正しいことを一所懸命やっていれば命令しなくとも人もその通りに行う、というこ
とですが、本当のところ、こちらが言わなければなかなかやってくれません。しかし、その
身正しからざれば令すといえども従わず、というのは真理です」
ある時、氏が洩らされたことがある。
「いまも義足の付け根が痛む。だが、それを表情に出せば会長は機嫌が悪い、と社員が思う
から、努めて出さないようにしている」
「春風を以て人に接し秋霜を以て自ら粛む」
(人に接するには春風のような気持ち良い態度で臨み、自分に対しては秋の霜が身を引き締
めるように厳しく慎む)
佐藤一斎の言葉をそのままに実践し、常に精進を怠らず人格を練り上げていく姿がそこに
はある。これこそ将の条件であろう。
続きは本誌で…。









