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2007年9月号:特集「運命を切りひらく」<ご好評につき完売いたしました>

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特集「運命を切りひらく」

『獄中の人間学』という本がある。敗戦まで満州国総務庁次長(実質上の総理大臣だったという)であった古海忠之氏と、敗戦後も中国人民解放軍と戦った城野宏氏との対談集である。
 古海氏は敗戦でシベリアに抑留。さらに中国に移送され、軍事裁判で禁固十八年の判決を受け、撫順監獄に収監された。帰国したのは昭和三十八年。四十五歳から六十三歳まで、人生でもっとも脂ののった時期を獄中で過ごしたのである。帰国した時、小学六年生で別れた長男がすでに結婚、子どもも生まれていたのに驚いたという。
 城野氏は日本が降伏した後も山西省で中国人を野戦軍に組織、指揮して毛沢東と戦った。しかし昭和二十四年に捕虜となり、太原監獄に七年。その後撫順監獄に移され、古海氏と出会うことになる。
 獄中生活を共にしたお二人が、「人間社会の縮図」を赤裸々に語り合ったのがこの本である。それはまさに人間学の宝庫である。

 例えばこんな話がある。
 監獄では神経衰弱になる人が多かった。彼らには共通の特徴があった。ゴマをする人間であることである。気に入られたい一心で監獄の管理者のほうばかりを見、調子を合わせようとし、結局は相手に振り回されて神経衰弱に陥る。
 また、家族に会いたい思いが募り、妻子や母親の写真ばかり見ている人もそうである。意識がその一事に支配され、他のことには反応しなくなるのだ。古海氏は言う。
「人間の脳味噌は、外部からの刺激に反応しなくなったら、もうおしまいだと思ったね。家族に会いたい気持ちは誰だって同じだが、それをどのように意識して処理するか。監獄の中で海を隔てた日本にいる人間に会えるわけがないから、思っても始まらない」


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