平和を守る具体策はほとんど語らない「平和教育」

北朝鮮の度重なるミサイル発射で緊張感が高まる国際情勢。
その中にあって、私たち国民一人ひとりが
平和を守るために取るべき行動とは──

占部 賢志(中村学園大学教授)
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※『致知』2017年11月号
※連載「日本の教育を取り戻す」P124

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【占部】
私は、複雑な国際関係を読み解く際は、
こうであってほしいという期待や希望、
あるいは好き嫌いなどの感情で見ては
いけないということを徹底して教えてきましたが、
この本(スイス政府編集『民間防衛』)に
書かれている世界観はリアリズムに徹しています。


【教師B】
以前先生から勧められてざっと読んでみましたが、
あんな小さな国が永世中立国として
堅実な国づくりをしている秘密が分かった気がしました。



【占部】
まず、世界の見方が日本とはまるで違うのです。

戦後の日本では、世界は平和愛好の国ばかりで、
したがってそれらの国の公正と信義を信頼して
我々日本の安全をゆだねる、
そういう趣旨のことが現行憲法の前文にあるように、
外部に依存している。

しかし、これは虚構ですね。

長く続いた東西冷戦が終わったかと思えば、
今度はテロの時代に突入。

最近ではトランプ政権誕生や英国のEU離脱などに
見られる強烈な自国第一主義の台頭など、
世界は混沌とした情勢です。

こうした現実を、スイスの『民間防衛』は目を
そらさず正視してこのように述べています。

重要ですからポイントをピックアップしておきます。


「最小限度言い得ることは、
 世界がわれわれの望むようには
 少しもうまく行っていない、ということである。
 危機は潜在している。恐怖の上に保たれている均衡は、
 十分に安全を保障してはいない。
 それに向かって進んでいると示してくれるものはない。
 こうして出てくる結論は、我が国の安全保障は、
 われわれ軍民の国防努力いかんによって左右される」



いかがですか。永世中立を支えている基盤は、
このような徹底したリアリズムなのです。

「危機は潜在している」と説く、こうした世界観は、
そのために何を用意しておくべきかを精密に提言するわけです。

これに対して我が国の「平和教育」は、
観念的に平和の尊さを説くだけで、
平和を守る具体策はほとんど語らない。
それは知的怠惰というほかない。

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